絞り

風景写真を見るのも撮影するのも好きな方達にとっては当たり前のような記事タイトルですが、これから本格的に風景写真を撮影したい、または風景写真を撮影する際に絞り(F値)の設定に毎回悩んでしまうと言った方達にはぜひ読んでほしい今回の内容です。

風景写真を撮影する方のカメラの設定は、ほとんどの方がマニュアルモード(M)だったり、絞り優先モード(Av)だったりします。つまり何かしらの設定を任意で行っているわけです。それはなぜかというと、自分の思い描いた表現をしたいからですね。特に絞りに関しては設定1つで写る景色が大きく違ってきます。そこで今回は絞り(F値)について少し深堀りして解説したいと思います。

題しまして、風景写真で絞り(F値)をF8〜F13に絞る理由って分かりますか? をお送りしたいと思います。これを読めば、風景写真撮影の際にはF8〜F13にしておけば間違いない理由が分かります!

▼ この記事で分かる事
  • 風景写真に於いて絞りを絞る理由
  • 絞り羽根によるレンズ性能への影響

目次

絞り(F値)と被写界深度について

被写界深度浅い

まず絞りについてですが、これは過去に記事にしたことがあるのでそちらを参考にしてみてください。

カメラ教室。F値(絞り)について分かりやすく説明します!

絞りによってレンズから入ってくる光の量を調整する事ができます。ここで重要なのは絞り(F値)がどういうものか。ではなく、絞りを変更する事で映りがどう変わるのかって事ですね。絞りと写りの関係は被写界深度というものが大きく関わってきます。被写界深度に関しても過去記事がありますので参考までにどうぞ。

一眼カメラで撮影!ボケと被写界深度の関係を理解しよう!

簡単に言うと、絞りを開放(F値を低くする)にすると被写界深度は浅くなりボケ味の強い写真になります。一方で絞りを絞る(F値を大きくする)と被写界深度が深くなって全体にシャープな写りの写真になります。まずは、ざっくりでいいのでこの関係は覚えておいてくださいね。

風景写真で絞りを絞る理由

風景写真は物撮りやポートレートと違って「これ」というピントを合わせるべき被写体を選択するのは難しいです。なぜなら風景写真は全体にピントが合ってほしいからです。当然写りの好みは人それぞれなので一概にこうした方がいいとは言えませんが、写真の特性としてはピントの合っている部分が強調されたように見えてしまうので、風景撮影では被写界深度を深くして全体にピントがあったように見えるような設定をする方が良しとされています。なので被写界深度を深くする為に絞りを絞る人が多いのです。

人によっては、写真の手前から奥側までピントを合わせたいからと被写界深度合成なる手法を用いる人も多くいます。被写界深度合成に関しても別で取り上げています。

[Photoshop]被写界深度合成の簡単な方法を解説します

絞り値(F値)はレンズ性能にも影響する

絞り値を変更すると影響するのは写りだけのように思いますが、写りの他にレンズの性能にも影響します。というのも写真はレンズから入ってきた光の像から作られるので、絞り値を変更するとレンズの性能をどれだけ引き出せるかが変化してくるのです。

普通に考えて、レンズの性能を最大限に引き出してあげる事が高画質な写真を撮影するコツとも言えます、ではレンズのどういった性能に影響するか見ていきましょう。

  • 解像度=写真の精細さ
  • 収差=写真の歪み
  • 周辺減光=写真の四隅の明るさ
  • この3つの項目で大きな変化が出ます。

    解像度の変化

    絞りを変更する事で、解像度に変化が出ます。絞りを開放にするメリットは 光を多く取り込める事 だとは思いますが、光を多く取り込む事で背景がボケやすくなったり、暗所部での撮影時にシャッター速度を稼ぐ事が出来るようになります。

    ですが、一方で光を多く取り込む事で写る像(被写体)がモヤっとした写りになったりします。俗に言うところの 写りが甘い という事ですね。

    絞りを絞る事で取り込む光の量は少なくなりますが、その分は写りはシャープな写りをするようになります。レンズの特性もありますが開放値では少しモヤッとした印象を受けます。しかし、絞りを絞るにつれて解像感が良くなっていきます。ですが、不思議な事に絞りがそのレンズの最小絞り値(一番大きなF値)になると解像度はまた甘くなりますね。これは、回析現象という現象が起きています。ここで、回析現象について説明するとややこしくなるので今回は割愛します。

    解像度の変化
    • 絞りを開放にすると光を多く取り込むので被写界深度が浅くなり、ボケやすい写りになる
    • 絞りを絞ると被写界深度が深くなりシャープな写りになる
    • ただし、絞り過ぎると回折現象が起きて解像が甘くなる

    収差の変化

    収差って聞き慣れない言葉ですよね。正直な所、数年カメラをやってきましたがあまり使用しない言葉だし、聞く事もなかなかありません。

    レンズの構造を思い浮かべてみると分かるかもしれません。カメラのレンズって湾曲型したガラスレンズが複数枚重なって構成されています。その湾曲は広角レンズになるにつれて顕著になります。広い範囲を撮影する為ですね。広角レンズの写りでも端の方に行くにつれて収差はひどくなる傾向があります。最近のレンズは非常に優秀なので、広角レンズでもこの収差を感じる事はなかなかないかもしれませんが、絞りによってはこの収差が目立ってしまいます。

    感の良い人はもうお気づきかもしれませんが、やはり絞りを開放にするほど収差は酷くなります。光を取り込む量が増えるからですね。

    収差がひどくなると色が滲んだような写りをしてしまうので、見る人によっては違和感のある写りに見える可能性があるので気を使うべき事例かと思います。

    夜景などで点光源が多くある場合は結構目立ちますね。暗所部でシャッター速度が稼げないからといって闇雲に絞りを開放にするのは解像感や収差に関わるのでNGです。

    シャッター速度が稼げない時は、三脚を使用してブレ対策をしっかりと行いましょう。

    収差の変化
    • 風景写真で良く使用する広角レンズでは、画面の端の方で像が流れたような写りになることがあるが、これは絞りを開放にする事で顕著になる

    周辺減光の変化

    次に周辺減光について見ていきます。周辺減光は、文字通り写真の四隅(周辺)の光量が落ちる事を言います。晴天の日中に絞りを開放にして撮影すると目立ちますね。

    この周辺減光も絞りが大きく関係しています。絞りを開放にする事で光は多く取り込む事ができますが、簡単に言うとレンズの周辺から入ってくる光が遮られたり減る事で周辺減光は起きます。

    周辺減光の変化
    • 絞りを開放にすると、レンズ周辺の光がレンズ内に入りにくくなる為に周辺減光が起きやすくなる。

    周辺減光に関しても絞りを絞る事で改善されます。

    少し難しい話をしてきましたが、正直なところ風景写真を撮影する上で絞りを開放にする事はデメリットな部分が多いです。この辺の特性を理解しておかないと写真撮影の際に、絞り迷子 になるので頭の片隅にでも置いていた方がいいかと思います。

    風景写真を撮影する上で絞りは絞った方がいいが注意点もある

    単焦点

    これまで、風景写真を撮影するなら絞りは絞った方がいいとお伝えしてきました。それは、解像感であったり収差であったり、周辺減光に大きく影響するからです。

    ですが、絞りを絞る上で一点だけ注意点があります。それが、回析現象 という現象です。

    回折現象とは、光や音などの波動が進む時に障害物などに遮られるとその障害物の背後に回り込む現象の事を言います。写真撮影に於いては、絞りを絞った時に光が絞りの背後に回り込んで撮像素子(センサー)まで届かなくなるために解像力が落ちてしまいます。

    レンズには最大絞り値と言うものがあります。「このレンズで絞れる最大絞り値」の事になるんですが、その最大絞り値近辺での撮影は回折現象が発生する可能性があるので注意しましょう。なんでもかんでも絞ればいいてわけではないって事ですね。

    全てを踏まえた結果絞りはF8〜F13の設定が好結果を生む!

    これまで説明してきた点を踏まえて風景写真を撮影する際の絞りはF8〜F13の間で設定するのがベストと言えます。もちろんケースバイケースですし、今の写真編集ソフトの技術なら撮影後になんとかなってしまうかもしれませんが、現場力を高めると言った意味でも、理解しておく必要があります。

    風景写真で解像感を求めるなら絞りF8〜F13がベスト!これを念頭に置いて撮影してみましょう!恐らくカメラ歴を重ねていくと自然と身につくことですが、やはりそのプロセスを知っている・知らないとでは差が生まれます。これを機会に少し勉強してみるのもいいかと思います。